昨日と同じ今日。今日と同じ明日。 あの水面もそんな風に、今も昔も変わらずに凪いでいるはずだった。 湖を臨む街、J市。そこに暮らす高校生の少年・水鶏証は、オーヴァードへの覚醒をきっかけにUGNの寮に入っていた。 親元を離れた、念願の一人暮らし。誰に妨げられることもない自由を満喫していた――かに思えたが。 空調の整備が間に合っていない寮での、寝苦しい夏の夜。 水でも飲もう。そう思って起きた、その時。 他に入居者の居ないはずの寮の廊下を。 ぺたり、ぺたり。 濡れた足音が忍び歩く音。 耳をそばだてる水鶏の部屋の前で、足音の主は歩みを止めた。 世界は既に変貌していた。 これは、それを秘めていたかった誰かの、祈りの物語。